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アメリカ歴代大統領研究ポータル

日本に大統領制度を採用できるか

アメリカ大統領と日本の首相の違い


首相と大統領の違い1―地位

 首相は国家元首ではなく行政府の長に過ぎない。アメリカ大統領は行政府の長であるのと同時に国家元首でもある。また首相は国民統合の象徴ではないが、アメリカ大統領は国民統合の象徴の役割を担っている。日本では国事行為、すなわち内閣の指名に基づく最高裁長官の任命、法令などの公布、恩赦の認証、外交使節の接受などは天皇に帰属するが、アメリカでは大統領に帰属する。

首相と大統領の違い2―解散権の有無

 日本の内閣は実質的に衆議院の解散権を持つが、アメリカ大統領は連邦議会を解散できない。そもそも連邦議会には解散という仕組みがない。また首相は国会議員を兼任するので、当然、法案提出権を持つが、アメリカ大統領は議員を兼ねることはできず、本来、法案提出権を持たない。ただ立法を勧告することができるので間接的に法案提出権を持っていると言える。
 さらに日本は議院内閣制であって、内閣と議会は連帯責任を負う。一方、アメリカ大統領と議会の関係は明確に独立している。行政府、立法府、司法府が互いに独立し、三権のいずれかが暴走しないように明確に三権分立の原則が守られている。ただ近年、行政府の肥大化が指摘されて久しい。

首相と大統領の違い3―拒否権

 首相と国会が対立した場合はどうなるか。国会は内閣に対して不信任決議を出して辞職を迫ることができる。それに対抗して首相は国会を解散できる。そして、総選挙で国民に信を問うことになる。
 アメリカ大統領が議会と対立する場合は、首相と国会の対立とは異なる。アメリカ大統領は議会の法案に対して拒否権を行使できる。しかし、上下両院が三分の二の票数で法案を再可決すれば法案は成立する。つまり、大統領の拒否権は絶対ではない。さらに議会は大統領を弾劾して罷免できるが、大統領は先述のように議会を解散できない。

首相と大統領の違い4―選出方法

 首相は国会によって選出されるが、アメリカ大統領は実質的に国民による直接選挙で選出される。本来は選挙人制度による間接選挙であるが、ほとんど形骸化しているので直接選挙だと考えられている。
 首相と大統領の選出方法の違いによって次のような違いが生じる。日本では国会での与党、つまり、多数の議席を占める党の党首が首相になるが、アメリカではそうとは限らない。例えば大統領選挙で民主党候補が大統領に選出されても、議会では共和党が多数の議席を占めるということがありうる。
 歴史上、そうした例は多くあり、大統領選挙の狭間で行われる中間選挙で議席をどれほど獲得できるかが、大統領の支持率を占う重要な指標になる。議会で反対政党が多数を握ると大統領は自らの政策に必要となる法案を通すことが難しくなるという問題がある。

首相と大統領の違い5―閣僚

 閣僚に対する関係も首相と大統領では違う。首相の下での閣僚は、その半分が国会議員である。そのため議会に出席するだけではなく、それぞれが法案提出権を持つ。また閣僚は首相と連帯責任を負う形式になっている。しかし、アメリカ大統領の場合、閣僚と連帯責任の関係にあるわけではなく、あくまで助言者という扱いである。最終的な判断はすべて大統領に帰属する。

首相と大統領の違い6―歴史

 首相のモデルはイギリスであり、大統領のモデルはアメリカである。イギリスでは君主の下で行政を担う存在として首相という職が設けられたのに対して、アメリカでは国王に代わる共和国の元首として大統領職が設けられた。そのため国王と首相が存在する形態はよく見られるが、国王と大統領が存在する形態は原則的に存在しない。歴史上、まったく例がなかったわけではないが極めて稀である。
 その一方、大統領と首相が存在する形態はフランスを代表として存在している。そのため大統領制は、よくアメリカ型とフランス型に二分されることが多い。外交の場では、首相よりも大統領のほうが優先される。サミットの場などで写真撮影する場合、各国大統領が中心に置かれる。そうした慣例は大統領が国家元首という地位にある一方で、首相が行政府の長に過ぎないという差に基づく。