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1936年、リテラリー・ダイジェストの世論調査は、共和党のアルフレッド・ランドンが現職のフランクリン・ルーズベルト大統領に対して地滑り的勝利を収めると予測した。1936年以来、リテラリー・ダイジェストはすべての大統領選挙の結果を的中させてきた。しかし、実際はルーズベルトが62パーセントの一般投票を獲得してランドンを破った。そうした誤りが生じた結果は、リテラリー・ダイジェストが行った調査に労働者や貧困者が含まれず、ルーズベルトの支持層を無視したからである。
1948年の大統領選挙で3つの主要な世論調査が共和党のトマス・デューイが現職のハリー・トルーマン大統領を破ると予測した。それらの世論調査にはサンプリング上の問題があり、正しく母集団を反映していなかった。ギャラップによる世論調査は、デューイが50パーセントの一般投票を獲得する一方で、トルーマンは44パーセントの一般投票を獲得すると予測したが、実際の結果はその逆でトルーマンが50パーセントの一般投票を獲得し、デューイが45パーセントの一般投票を獲得した。シカゴ・デイリー・トリビューンが1面で「デューイがトルーマンを破る」と報じた記事は有名である。2000年の大統領選挙を除いて、それ以来、世論調査は大統領選挙の結果をほぼ正確に予測している。
選挙運動の専門家は、マス・メディアによって行われる世論調査を監視し、有権者が何を考えているのかを知り、どの程度、選挙運動がうまくいっているのかを測定し、選挙戦略を調整する。最初に有効に世論調査を使う選挙運動組織を作り上げたのはジョン・ケネディである。
1980年代後半から1990年代にかけて、世論調査の技術の刷新とコンピューターの導入によって、世論調査は比較的安価で済むようになり、全国や州の世論調査が選挙に欠かせないものとなっている。世論調査は、実際の投票が行われる前に選挙結果が分かってしまうとしてしばしば批判を受けてきた。例えば、1996年の大統領選挙で現職のビル・クリントン大統領の優勢が幾つかの州で明らかであったので、クリントンの再選は投票日の前に確実視された。また世論調査は、投票率を下げ、選挙結果が変わる可能性を阻害していると批判される。
2000年の大統領選挙の投票日の夜、ゴアがジョージ・W・ブッシュをフロリダ州で破ったという投票通信サーヴィスの出口調査のデータをもとに報道各局は当確予想を行った。投票通信サーヴィスは報道各局とAP通信が設立した協同組合である。投票通信サーヴィスから提供されたデータをもとに各局の専門家が最終判断を行った。東部標準時刻午後8時、主要な報道各局はフロリダ州で勝利を収めたのはゴアと伝えた。しかしながら、数時間後、報道各局は実際に集計された票が予測と合わないのを知って勝利宣言を撤回した。報道各局によると、フロリダ州でゴアが勝利したと判定したのは、出口調査の結果はゴアが若干優勢だったこと、最初の結果が誤ってデータベースに入力された結果、コンピューターによって最終的な記録よりもゴアが多くの票が投じられたという予測が出たことによる。
2016年の大統領選挙ではドナルド・トランプが大部分の世論調査の予測を覆して当選した。その結果、世論調査は大きく信頼性を損なった。今回、明らかになった問題点として、世論調査そのものが投票行動に影響を与えたのではないかという点である。
特にフロリダ州では、トランプとヒラリー・クリントンの支持率が拮抗していた。しかし、トランプの支持者には熱心な支持者が多かったのに対して、ヒラリーの支持者には熱心な支持者があまり多くなかった。トランプの不利が報じられた結果、ヒラリーの支持者の投票率が下がったのに対して、トランプの支持者の投票率が上がったのではないかと考えられる。 |
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