大統領の猛母達
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自分の息子が大統領になる。それは世の母親にとって非常に誇らしいことに違いない。しかし、ジョージ・ワシントンの母は違った。ワシントンの母メアリは息子のジョージが大統領になるのが大いに不満だった。就任式にさえ出席しなかった。ただワシントンは、負債を清算して就任式が行われるニュー・ヨークまで行くための旅費を工面するために借金しなければならなかったから、はたしてニュー・ヨークまでメアリを連れて行けたかどうかは疑問だ。
メアリ・ワシントン
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メアリはジョージが独立戦争に参加したことに憤慨していた。メアリの考えによれば、母を放置して戦争に出かけるとは何事かということである。ジョージはメアリに経済的援助をしたが、それでもメアリは満足せず、ヴァージニア立法府の面々に経済的援助をしてくれるように要求した。ジョージはメアリにそれを止めるように懇願した。メアリはしばしば周囲の人達に自分は貧困で困っているのに息子が取り合ってくれないとこぼしていたという。ジョージが大統領になろうとも、メアリにとっては不孝息子に過ぎなかったわけだ。
ハリー・トルーマン大統領の母マーサも息子が大統領になった時にまだ存命していた。マーサは実はエイブラハム・リンカーン大統領が大嫌いだった。マーサはなぜリンカーンが大嫌いだったのか。マーサは1852年の生まれで南北戦争を体験している。マーサの体験談によると、南北戦争時に北軍のキャンプに家族ともども監禁されたという。マーサは常々それを息子ハリーに語って聞かせていた。そうした理由で北部の大統領のリンカーンが気に食わなかった。
マーサがホワイト・ハウスを訪れた時、リンカーン・ベッドルームに寝るくらいなら床で寝たほうがましだと息子に伝えた。またマーサが臀部骨折を患った時、ベッド際に駆けつけたハリーに対してマーサは次のようにまくしたてた。
リンカーン・ベッドルーム
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「おまえから言い訳も聞きたくないわ。先週、おまえがリンカーン記念塔で献花している写真を新聞で見ましたよ」
いくら大統領といえども母には頭が上がらなかったということか。
リンカーン記念堂に参拝するトルーマン(1950年)
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