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昭和天皇の全国巡幸

どこです、どこです、陛下はどこです
天皇陛下のお食事
 天皇陛下は九州巡幸でどのようなお食事を楽しまれたのかここで紹介しておきたい。

 5月24日、佐賀県武雄の春慶屋旅館でお召し上がりになったご朝食は、ハム・エッグ、ほうれん草のおひたし、野菜サラダ、トーストという簡素なものである。

 6月4日、宮崎県宮崎の紫明館でお召し上がりになったご夕食の献立は、鰻の白焼き、鶏卵の黄味をあしらった煮合わせ物、えのはの塩焼き鶏肉スープに日向南瓜、けんちん汁、日向西瓜である。特にえのはの塩焼き鶏肉スープに日向南瓜は宮崎の郷土料理である。天皇陛下はお酒をほとんど嗜まれなかった。

 6月7日、大分県別府の日名子旅館でのご夕食は、若鶏のバタ焼き、野菜の土佐煮、鮎の塩焼き、城下鰈、南瓜、蕗と鯛の酢の物、お汁、メロンをお召し上がりになられた。腹八分目を心がけられた天皇陛下にしては珍しくたくさんお召し上がりになられた。

 6月10日、大分県日田の竹内八三郎邸でのご朝食は、オートミール、ハム・エッグ、ハム・サンドイッチ、ジャム・トースト、牛乳、鮎の煮込み、西瓜をお召し上がりになった。天皇陛下は日頃から牛乳をご愛飲されていた。

 質素を愛された昭和天皇であったが、時には御宿泊所の饗応に行き過ぎもあったようである。5月31日、熊本県八代の松井邸での夕食を、「夕食は大変な御馳走。大きな生の鯛が立っている前に鯛の刺身が一杯あるのには驚いた」と入江侍従が日記に書き残している。おそらく侍従自身の夕食がこれだけのものであれば、天皇陛下のご夕食はさらに大変な御馳走であったかもしれない。ただ天皇陛下は宮崎巡幸の際、「特に好みもないからどこの料理が一番うまかったかとりたてて言うこともない」と記者団にお答えになっている。お迎えする人々にご配慮されたのであろう。