実はグレース・ベデルは後にもう一通の手紙をリンカーンに送っている。日付は1864年1月14日である。
「リンカーン大統領へ
よくよく考えて私はあなたにお手紙を差し上げることにしました。何かお仕事を得るためにあなたの助けを求めます。大統領選挙前に、チャタヌーガ郡ウェストフィールドの女の子からあなたの顔をより良く見せるためにお髭を生やすように薦めた手紙を受け取ったことを覚えていますか。その時の女の子が一人前の女性になりました。あなたがこの手紙に『あなたの真実の友にして幸福を願う者』とご自身で署名して下さると信じています。今も私の友であることをお示し願えませんか。ここ二、三年、私の父は財産をほとんど失ってしまいました。我々は父がどうして欲しいかはっきりは分かりませんが、自分でできることを何かするべきだと考えました。たとえ私が何ができるか知っているだけだとしても。多くの女性がワシントンの財務省で紙幣を作る作業などで働いて高いお給金を得ていると聞いています。私もそこで働けないでしょうか。あなたには影響力がありますから、あなたからお言葉をいただければ私は自活できるだけのお仕事を得られるでしょう。もしできれば両親も支えたいと思います。それが私の強い望みです。私の良心は私があなたに支援を求めたことを知りません。もしあなたが私の家族が信頼に足るか証明を必要とするなら、あなたも知っているはずの人々の名前を挙げます。私達はウェストフィールドに住んでいた二年間を除いてずっとここ[ニュー・ヨーク州アルビオン]に住んでいます。この件について私は既にあなたに一度お手紙を送りましたが、お返事がいただけませんでした。きっとお手紙を受け取っていないのだと思います。あなたがお手紙を無視するような不親切なことをするはずがないと思っているからです。グレース・ベデル」
リンカーンの返事は残っていない。残念ながらリンカーンはベデルに返信しなかったようだ。リンカーンの手元に届かなかったのか、それとも南北戦争に忙殺されてそれどころではなかったのかはわからない。 |